群ようこさん著 「トラちゃん」

あるじです今日19日は、がんじろうの6ヶ月目の月命日。最近になって、以前実家で飼っていたポチの最期を思い出したりしたご縁でか、群ようこさん著エッセイ「トラちゃん」を手にすることになりました。





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"生きものとは、いったい何を考えているのかなあ、と思うことがよくある。ことばは喋れないにしろ、少なくとも私たちが飼っていた生きものは、非常に感情豊かで、ペットなんていう生やさしいものではなく、ネコやネズミやインコの格好をした、人間であった。”
生き物の仕草や表情を生き生きととらえ、家族の絆や細やかな愛を横糸に絡めて描くユーモア・エッセイ







エッセー紹介とカバーの絵、そして何よりもタイトル!に引かれて手にしました。


・金魚のよしこちゃんの話
・手のり文鳥のチビの話
・十姉妹のビンタちゃんの話
・インコのピーちゃんの話
・犬のピーターの話
・初代トラちゃんの話
・二代目トラちゃんの話
・いたずら子ネコたちの話
・モルモットのハム子ちゃんの話
・ハツカネズミのモンジロウの話
・ハツカネズミの大所帯の話




どのお話にしても、ユーモアと優しいまなざしで描かれていて、まるで「ハムスター日記」のマンガを頭の中で自動再生しながら読んでいるような気分。



それでも、動物を飼う以上、避けて通れないのが死別の悲しさ。

殆どのお話の場合が、お別れの場面をユーモアを以って簡潔に描いているため、悲しみが後を引かないうちに次のお話へ進んでしまうのですが、一つ、とっても心に残る別れの場面がありました。それが、「初代トラちゃんのお話」の別れの場面です。




ここに一部引用した本文の全ての著作権は、著者に帰属します


群ようこさん著
「トラちゃん」
93ページ~95ページ



トラちゃんが寝てばかりいるようになって二ヶ月ほどすぎたころ、突然トラちゃんとチビの姿が見えなくなった。ごはんを作って待っていても、大声で名前を呼んでみても、姿をみせない。いったいどうしたんだろうか、と毎日心配していた。トラちゃんが失踪して三日目、夜中にベランダで、弱々しく鳴くネコの声がした。

「あっトラちゃんだ

私たちはガバッと起きあがり、寝まき姿のまま、ベランダに面したガラス戸を開けた。やはりそこには、きちんとおすわりしたトラちゃんがいた。

「まあ、どこにいっていたの?寒かったでしょうに。さぁ、早くおうちにお入り」

ふだんなら喜んで入ってくるのに、その夜はうつむいたまま、じっとおすわりした姿勢を変えない。

「やっぱりそうなのかしら・・・」

母親はつぶやいて、台所に行って小さな器に水を入れて持ってきた。

「最後のお別れにやってきたのかな、キミは」

頭をナデながらいうと、トラちゃんは尻尾をかすかに左右に動かした。水を少しなめてもその場を立ち去ろうとせずに、じっとしている。

「どうして、じっとしているのかねぇ」

私がきくと、

「バカだねぇ。残してゆく子供のことが心配なんだよそれが母親の気持というものです」

母親はまたキッパリといった。

「トラちゃん、コトラちゃんやチビちゃんのことは、全然心配しなくていいからね。あとはしっかり面倒みてあげるから」

不思議なことに、そういうとトラちゃんはすっと立ち上がって、ベランダから出ていこうとした。体にさわったら、いつもだったらホカホカしているのに、体はひんやりしていた。首から上だけが少しだけ暖かいようだった。

「トラちゃん、心配しなくていいからね

暗闇の中に去ってゆくトラちゃんの背にむかって私たちは叫んだ。トラちゃんはこっちのほうをふりかえり、しばらく立ち止まっていたが、ひとこともいわないまま静かに見えなくなってしまった。私たちは何もいわず、布団をふっかぶって寝た。

もしかしたら、次の日、トラちゃんはひょっこり姿を現すのではないかと期待していた。しかし、やっぱり、それからトラちゃんは姿をみせなかった。チビは、トラちゃんが最後のお別れにやってきた翌日、ヨレヨレになってやってきた。今まで一緒だったトラちゃんがいなくなったため、半分狂ったようになっていた。体中泥だらけにして、あっちこっち捜しまわっている。あれだけ私たちに慣れなかったのに、私たちにまつわりついて、

「うわぁ、うわぁ」

と悲しそうに泣くのであった。









この後、チビも後を追うようにいなくなってしまい・・・3にゃんがいなくなってしまってポッカリとこころにスキマが出来てしまった家族のもとに、ひとり立ちしたはずのコトラが戻ってくる。

亡くなった母ネコのトラの霊が呼び寄せたように、帰ってきたコトラを「二代目トラちゃん」として迎える事になります・・・・


おそらくは、月明かりがうすくさしこむベランダへやってきた、賢いきもったま母さんネコの初代トラちゃんの別れの場面と戻ってきた二代目。

全てが頭の中で映像として映し出されてゆくのを感じつつ最後まで読み終えました。





がんじろうのこと、
実家でかった3代のポチたちとその最期のこと、
無知だった子供の頃に救ってあげられなかった多くの赤ちゃんネコ・赤ちゃんイヌたちのこと。




これからも忘れずに心に留めて、ときどき思い出してあげよう。。。

そんな一冊になりました





                        



群ようこさん著 「ビーの話」~1


群ようこさん著 「ビーの話」~2


                        




トラちゃん

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この記事へのコメント

ヒメチュー
2007年06月21日 02:37
トラちゃん…悲しいけど温かいお話ですね。
生き物はいつか死ぬ時が来るのだと
覚悟はしてても飼ってる子が先に行くと
ロストペット?鬱病に成る人も居ます。
心の中で思い出となって愛しんでいる…
その気持ちを大切に前に進むのが
亡くなったペットちゃん達の供養だと
思います。
経験を積んで今が有るのだから過去の
経験を生かして今の子達にして
あげられるのです。
がんじろうちゃんも昔の猫ちゃん達も、
とら母さん頑張れーて!
ほら、ささやいてますよ~^^v
2007年06月21日 14:34
私も猫関係の本、よく読みましたけど、これはまだ読んでないです。
悲しい話ですね。読んでいて思わず涙ぐみました。
猫の最後はほんとに潔いと思います。猫に限らず動物はみな多かれ少なかれそうですね。
じたばたするのは我々飼い主側のようです。
がんじろう君、とら母さんは元気だよぉ・・ねっ?(=^・^=)
2007年06月21日 20:11
☆ヒメチューさん
そうですね。忘れないでいてあげること、それが供養ですネ。ありがとうございます。

この本は全体を通して、著者のお母さんがきもったま母さんとして登場してくるのですが、その方が更に温かいのです。おおらかで生き物を愛し可愛がり、猫のトラちゃんの前にハツカネズミやインコを連れてきて、「よろしくね!」とかあいさつさせちゃうような偉大な方で、読み進むうちにファンになっちゃうんですよ(^^)
2007年06月21日 20:17
☆ノアさん
こんばんは~(^^)
この「初代トラちゃんのお話」を読んだ時に、「あー、これはこの本に呼ばれたな」って思ったんですよ。がんじろうのことや、ノアさんのとこでお話した最後のポチの最期のことがあった後だったんです。
ノアさんもやっぱり涙が出ました?私もです。。。このトラちゃん親子はとても礼儀正しい、躾のできた賢い親子として描かれていて、微笑ましいエピソードを読んだあとだけに悲しい場面でした。。。

テレビの「やっぱり猫が好き」のモデルになた猫を飼ってらしたもたいさんのご友人が群ようこさんなのだそうです。このテレビのもとになった猫ちゃんについてのエッセー「ビーの話」も読んだのですけど、温かい文章で良かったですヨ。

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